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雨がいろいろ書くよ。
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最後の小話です。

 キースが時折閉じこもる精神世界の構造はよく分からないが、ときおり其処の影響がそのままそっくりこちらに出てしまう時があり、それは高熱だったり体力の著しい低下だったり(このあいだは頬に傷を作ってきた)とあまり喜ばしい物では無いのだが、今日は何か違っていた。
 床で瞑想するキースの服の背中の部分がひどく裂かれ、そこから現れていたのは彼の髪と同じ色の、大きな一対の翼だった。
 言うべきか言わざるべきかおろおろと冷や汗をかく炎を尻目にキースはふう、と溜息をついた。
「ああ、炎。来ていたんだね」
 おっとりとした微笑を炎に向けるキース。
 そのまま立ち上がり自分の元へ向かおうとしていたのだが。
「うぁっ」
 背中に慣れぬ物があった所為か、後ろ向きに引き摺られるように倒れてしまった。
「キース様っ!」
 間一髪の所で炎に支えられ、ありがとう、とまた微笑む。
 ふかふかの感触に気を取られ、一瞬呆けてしまった。
「……あれ?」
 背中の違和感に気づいたのか、炎に腕で抱えられたまま翼に触れる。
「炎、これ……」
「わ、私にも何なのか、全く……」
「誰かの干渉があったから……その所為かな。背中が重い」
 ふう、とさっきとは違った意味のため息をつく。
「そうだ。炎、こっちを向いて」
「はい?」
 炎が応えるのを待ってか待たずか、キースが炎を掻き抱いた。
「キース様!?」
「もうすぐ消えてしまうだろうから……その前に」
 すぐ近くの美しい笑顔に、炎の心臓がばくばくと鳴る。
「き、キース様、このようなお戯れは……」
 おろおろとする炎の様子に微笑み、キースの背中の羽がゆっくりと動き、
「あ……」
 炎の体を、柔らかい羽で包んだ。
「……僕は、小さいから。炎の体全部を抱きしめるのが、出来ないでしょう? でも、今なら出来る」
 ぎゅう、と腕に力が篭る。
「ねえ、僕は炎のお母さんみたいに、おまえに触れたいんだよ」
 炎がその言葉の意味を理解する前に、キースの翼が静かに散らばり、消え去った。


 ぱたりと眠りに落ちてしまったキースを、寝台に運んだ後に手のひらを見ると、淡い金色の羽根が残っていた。
『炎のお母さんみたいに』
 あの言葉も、あの翼も、夢じゃない。
 心がじわじわと温かいもので満たされるのを感じながら、炎は部屋を後にした。


「おやすみなさい、キース様」

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